AI・技術トレンド
AI時代にITエンジニアは生き残れるか【2026年】|AIを活用する人材は339万人不足、代替されるのは事務職
最終更新日: / 著者:Direct type編集部 / 監修:田村 有加理(Direct type編集長)
この記事でわかること
- ・経済産業省の推計では、2040年にAI・ロボット等利活用人材が約339万人不足する一方、事務職は約437万人余剰になる
- ・ITエンジニアは省力化される側ではなく、省力化を実現する側に位置づけられている
- ・ただし業務単位では代替が進む領域がある。境界線は「判断を伴うかどうか」
- ・提示年収レンジの中での位置は、AIの影響を受けやすいかの目安になる
- ・市場価値が上がる4つの役割と、今日から取れる行動
- ・注意:経済産業省の推計は一定の前提条件(国内投資の拡大・産業構造転換の実現)に基づく試算であり、確定した将来予測ではありません
「AIでエンジニアの仕事がなくなる」今ではエンジニアたちのリアルな懸念事項となっています。果たして、それは事実なのでしょうか。
経済産業省が2026年3月に公表した「2040年の就業構造推計(改訂版)」によると、2040年にAI・ロボット等の利活用を担う人材は約339万人が不足する一方、事務職は約437万人が余剰になると推計されています。AIによって省力化されるのは事務職であり、ITエンジニアは省力化を実現する側に位置づけられています。
これは、経済産業省が2019年3月に発表した「IT人材需給に関する調査」において「2030年までに最大79万人のIT人材が不足する」と試算されていたのと同様、将来にわたってIT・デジタル人材が大幅に不足する見通しが変わっていないことを示しています。
ただし、「エンジニアという職業全体の需要が高いこと」と「個人のキャリアの安全」は必ずしも一致しません。 この記事では、国の推計データで今後ITエンジニアが置かれる状況の全体像を確認し、そのうえでITエンジニアの仕事がAIに取って代わられる可能性と、市場価値を上げるためにとるべき手段を整理します。
1. AI時代において不足するのは、むしろITエンジニアです
経済産業省の推計では、2040年に「AI・ロボット等の利活用を担う人材」が約339万人不足する一方、事務職は約437万人余ります。AIで減るのは定型的な事務の仕事で、ITエンジニアはAIを使って仕事を変える側にいます。
| 職種 | 2040年の過不足 |
|---|---|
| AI・ロボット等の利活用を担う人材 | 約339万人不足 |
| 事務職 | 約437万人余剰 |
出典:経済産業省 経済産業政策局「2040年の就業構造推計(改訂版)について」(2026年3月)。「AI・ロボット等の利活用を担う人材」には、ITエンジニアにあたる情報処理・通信技術者のほか、機械技術者などが含まれます。本推計は国内投資の拡大と産業構造転換が実現する場合の試算です。
2022年に236万人だったこの人材は、2040年には782万人が必要になると推計されています。AIが広がるほど、AIを導入して使いこなす人が必要になるという構造です。
IT人材の需要の中心が、IT業界から非IT分野へ移る
339万人という不足は、すべての業界を合わせた数字です。経済産業省は同じ推計で、業界ごとの内訳も示しています。それを見ると、この人材が足りなくなるのは、製造業や小売業など非IT分野だと分かります。
| 業界 | 2040年の過不足 |
|---|---|
| IT企業(情報通信業) | 102万人余剰 |
| 製造業 | 125万人不足 |
| 卸売業・小売業 | 77万人不足 |
| 建設業 | 26万人不足 |
| 運輸業・郵便業 | 26万人不足 |
出典:経済産業省 経済産業政策局「2040年の就業構造推計(改訂版)について」(2026年3月)。主な業界のみ掲載しています。
一方、IT企業(情報通信業)では、この人材はむしろ102万人余ります。IT企業への就業者自体は増え続けるものの、AIや自動化によって従来の作業が効率化され、これまでより少ない人数で業務を回せるようになるためです。さらに、IT企業には製造や介護のような「物理的な現場業務」が存在せず、他産業でのIT内製化も相まって、受託型を中心とするIT企業内に労働力の過剰が生じると試算されています。
ITエンジニアの仕事がなくなるのではなく、活躍の場がメーカーや小売などの会社へ広がっていく、という見通しです。
2. ITエンジニアの業務のうち、代替されるものとされないもの
職種としては不足する一方で、業務単位では代替が進む領域があります。境界線は技術力の高低ではなく、判断を伴うかどうかです。答えが決まっていてそれを出力する仕事は代替されやすく、何が答えかを決める仕事は代替されにくい傾向にあります。
| AIによって作業時間が大きく圧縮されている業務 | AIに任せきれない業務 |
|---|---|
|
仕様書通りの実装 ボイラープレートの記述 単体テストの作成 定型的なバグ修正 ドキュメント作成 既存コードの読解・説明 手順書に沿った運用作業 |
要件定義・課題の定義 技術選定・アーキテクチャ設計 障害時の意思決定 ステークホルダーとの折衝 AI出力の妥当性検証 育成・技術文化の醸成 レガシーの仕様逆算と刷新設計 |
国の推計も、スキル単位で代替の起きやすさを見ています
経済産業省の推計は、職種をまるごと見るのではなく、仕事に含まれるスキルの単位で、代替の起きやすさを見ています。調整業務や要件分析のような定型的なスキルは代替が進みやすく、対面での議論のようなスキルは代替されにくいという分析です。ITエンジニアの仕事にも、この両方が含まれています。
出典:経済産業省 経済産業政策局「2040年の就業構造推計(改訂版)について」(2026年3月)
3. 提示年収のレンジは、AIの影響を受けやすいかの目安になります
Direct typeが集計した求人データでは、同じ職種名でも求人提示年収に2倍以上の開きがあります。その差を生んでいるのは、「解決できる課題の難易度」です。この違いは、AIに任せやすい仕事と、任せきれない仕事の境界とも重なります。そのため、提示年収レンジの中での自分の位置は、AIの影響を受けやすいかどうかの目安になります。
| レンジ | 任される仕事 | AIの影響の受けやすさ(目安) |
|---|---|---|
| 下限付近 | 指示された通りに動くシステムを保守・開発する | 受けやすい |
| 上限付近 | 誰も仕様がわからないレガシーシステムを刷新する/組織の技術力を底上げする/障害が起きない設計をする | 受けにくい |
出典:Direct type独自調査「2026年上半期 ITエンジニア職種別 求人提示年収」(typeブランドが保有するITエンジニア求人データ数万件規模を独自集計/2026年6月調べ)。金額は職種によって異なります(例:バックエンドエンジニアは下限504万円・上限1,064万円)。「AIの影響の受けやすさ」は、任される仕事の内容から編集部が判断した目安です。
「バックエンドエンジニアはAIに代替されるか」という問いには、一概に答えることはできません。なぜなら、下限504万円と上限1,064万円の求人では、同じ職種名であっても担う業務の難易度が根本的に異なるからです。重要なのは「職種名」ではなく、「自分がどの難易度(年収帯)の仕事をしているか」なのです。
定型業務が多い職種は、判断を伴う仕事を増やすのが近道です
| 職種 | 平均提示年収 | 中心になりやすい業務 |
|---|---|---|
| サーバ運用・保守 | 634.5万円 | 手順書に沿った監視・定型作業 |
| テクニカルサポート | 585万円 | マニュアルに沿った一次対応 |
| ネットワーク運用・監視 | 580万円 | アラート監視と一次対応 |
出典:Direct type独自調査「2026年上半期 ITエンジニア職種別 求人提示年収」(typeブランドが保有するITエンジニア求人データ数万件規模を独自集計/2026年6月調べ)
これらの職種は、手順や基準が決まった作業の比率が高く、AIの影響を受けやすい領域です。ただ、同じ職種の中でも、障害の原因を突き止めて再発を防ぐ、監視の仕組みそのものを見直すといった、判断を伴う仕事を担う人はいます。
そうした仕事を少しずつ増やしていくことが、AIの影響を受けにくくなる近道です。具体的な進め方は「今日から取れる5つの行動」で紹介しています。
4. AI時代に市場価値が上がる4つの役割
AIがコードを書く前提の開発現場で求められるのは、課題定義者・AIオーケストレーター・技術的意思決定者・基盤の担い手の4つです。いずれも「AIのアウトプットを判断・統合する側」に立っている点が共通しています。AIと競争するのではなく、AIを自分のツールとして従え、マネジメントする立場に移ることが本質です。
役割1:課題定義者(プロダクト志向のエンジニア)
事業の課題を深く紐解き、技術によって解決すべき「問い」そのものを定義する役割です。プロダクトの仕様や「何を作るべきか」という本質的な意思決定を、AIに委ねることはできません。ここで求められるのは、ビジネス指標の理解、ユーザーの潜在課題の言語化、そして適切な優先順位づけです。
役割2:AIオーケストレーター(AI駆動開発の実践者)
AIに適切な指示を出し、複数のAIを組み合わせて成果を出す役割です。コード生成だけでなく、テスト・インフラ構築・デバッグまでを指揮します。求められるのはプロンプト設計、AI出力のレビュー能力、ワークフローの設計です。
役割3:技術的意思決定者(アーキテクト/テックリード)
トレードオフを判断し、その責任を負う役割です。AIは選択肢を提示できますが、組織の状況・保守体制・将来の拡張性を踏まえた決定はできません。Direct typeの調査では、テックリードの平均提示年収は978.5万円で25職種中1位です。
役割4:基盤の担い手(SRE/プラットフォームエンジニア)
AIが生成したコードが安全に動く土台を作り、運用する役割です。生成量が増えるほど、品質保証とインフラの重要性は増します。セキュリティも同様です。求められるのはIaC、可観測性、CI/CD、セキュリティの知見です。
5. 今日から取れる5つの行動
転職しなくてもできる対策があります。効果が大きいのは、今の職場で判断を任される仕事を1つずつ増やしていくことです。判断を伴う仕事の経験が、そのまま市場価値になります。
1AIを「使う」から「指揮する」へ切り替える。コード補完だけでなく、テスト生成・リファクタリング・調査・設計レビューまで用途を広げます。重要なのは、AIの出力を鵜呑みにせず妥当性を検証する目を鍛えることです。
2判断を任される仕事を1つ増やす。要件定義のミーティングに参加する、技術選定の議論に加わる、後輩のレビューを担当する。転職せずにできる、効果の大きい対策です。
3成果を数字で記録する習慣をつける。「AI活用で工数を◯%削減した」と語れるかどうかで評価は大きく変わります。職務経歴書にそのまま使えます。
4学習対象を「賞味期限の長いもの」に寄せる。特定フレームワークの記法は数年で陳腐化しますが、設計原則・データモデリング・ネットワーク・セキュリティといった基礎原理は、時代を超えて活きる「息の長い技術」です。
5自分の市場価値を定期的に確認する。社内の評価だけを見ていると、市場との乖離に気づけません。半年に一度は外部の評価を確認することをおすすめします。
6. AI時代のエンジニアキャリアに関する3つの誤解
「未経験からITエンジニアになるのは、もう手遅れ」「AIエンジニアにならないと生き残れない」「年齢が高くなるほど不利」という3つは、いずれも正確ではありません。国の推計と実際の求人データを踏まえて整理します。
誤解1:未経験からITエンジニアになるのは、もう手遅れである
手遅れではありません。変わったのは「参入障壁の高さ」と「求められる領域」です。
AIによって「単純なコーディング」の価値が下がったため、過去のような「指示通りにコードを書くだけの未経験採用」は消滅しつつあります。
今評価されるのは、「AIを使いこなして高速で学習し、設計や構造の基礎を理解している人材」です。安易な転職が難しくなった反面、適切な知識を身につけた求職者にとっては、むしろ真価が問われる好機と言えます。
誤解2:AIエンジニアにならないと生き残れない
結論から言えば、AIを自ら開発するエンジニアを目指す必要はありません。
「AI時代に市場価値が上がる4つの役割」で挙げる4つの役割のうち、AIモデルそのものを開発・構築するのはごく一部です。実務において価値を発揮するのは、むしろ「AIを道具として使いこなし、その成果物を判断・統合する側」に立つ人材です。
実際に、経済産業省が定義する「AI・ロボット等の利活用を担う人材」にも、AIの開発者だけでなく、機械技術者やその他の情報処理・通信技術者が幅広く含まれています。専門のAIエンジニアでなくとも、技術を利活用する立場であれば十分に市場価値を高めることが可能です。
誤解3:年齢が高くなるほど不利
AIが最も苦手とするのは、「業務ドメインの深い理解」や、利害関係をまとめる「泥臭い対話・調整能力」です。これらを踏まえた「課題定義」や「技術的な意思決定」といった上流工程において、豊かな実務経験を持つベテラン層はむしろ圧倒的に有利な立場にあります。
真のリスクは、年齢そのものではなく、作業者としての「実装業務」だけに自らの役割を固定してしまうことです。経験を武器に上位の役割へシフトできれば、年齢はむしろ強力な差別化要素となります。
自分の市場価値を確認する
社内の評価だけを見ていると、市場との乖離に気づけません。Direct typeはITエンジニア向けのスカウト型転職サービスです。職務経歴を登録すると、あなたの経歴に関心を持った企業からスカウトが届きます。どんな企業が、どのポジションで声をかけてくるか。それ自体が、現在の市場価値を示す情報です。求職者の利用は完全無料です。
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この記事のまとめ
- ・経済産業省の推計では、2040年にAI・ロボット等利活用人材が339万人不足、事務職は437万人余剰
- ・ITエンジニアは省力化される側ではなく、実現する側
- ・2022年に236万人だったこの人材は、2040年に782万人が必要になる見込み
- ・ただし業務単位では代替が進む。境界線は「判断を伴うか」
- ・提示年収レンジ内の位置は、AIの影響を受けやすいかの目安になる
- ・市場価値が上がるのは、課題定義者・AIオーケストレーター・技術的意思決定者・基盤の担い手
- ・現職で判断を任される仕事を増やすことが確実な対策。転職だけが手段ではない
- ・不利なのは年齢ではなく、役割が実装のまま固定されていること
AI時代のITエンジニアに関するよくある質問
Q
ITエンジニアの需要を考えるうえで、経済産業省の推計はどのくらい信頼できますか?
+
前提条件つきの試算として読むのが適切です。この推計は、国内投資の拡大と産業構造の転換が実現する場合を想定しています。前提が変われば数字も変わるため、何人不足するかという数そのものより、「事務の仕事が減り、AIを活用する人材が足りなくなる」という方向性を読み取る材料として使うのがおすすめです。
Q
AIの影響が心配なエンジニアは、今すぐ転職したほうがいいですか?
+
急いで決める必要はありません。まず、今の職場で判断を任される仕事を増やせるかを確かめてみてください。設計のレビューに加わる、技術選定の議論に参加するといった機会が得られるなら、現職のままでも経験は積めます。そうした機会が見込めない場合や、自分の経験が社外でどう評価されるかを知りたい場合は、転職するかどうかを決める前に、市場での評価を確かめておくと判断しやすくなります。
Q
職場で生成AIを使えないエンジニアは、どうやってAIのスキルを身につければいいですか?
+
業務の外で触れる機会をつくるのが現実的です。個人の開発で使ってみる、学習用の環境で試すといった方法があります。あわせて、職場での利用ルールを確認し、社外に情報を出さない範囲で小さく試せないかを提案してみるのも一つの手です。試した内容と結果を記録しておけば、職務経歴書や面接で話せる材料になります。
Q
AIに関する資格は、エンジニアのキャリアに役立ちますか?
+
資格だけで評価が大きく変わることは多くありません。企業が知りたいのは、AIを使って何をどう改善したかという実績だからです。ただ、体系的に学ぶきっかけとしては有効です。資格を取るなら、学んだ内容を業務や個人開発で実際に使い、その結果まで説明できるようにしておくと評価につながります。
Q
AIを活用した実績は、職務経歴書にどう書けばいいですか?
+
ツール名を並べるのではなく、何に使い、どんな成果が出たかを書きます。たとえば「GitHub Copilotを使用」ではなく、「AIによるテスト自動生成で、回帰テストの工数を月40時間削減」のような形です。用途・成果・仕組み化の3点をそろえると、企業が検索するときにも、読んで評価するときにも伝わりやすくなります。
Q
AIが書いたコードをレビューするとき、エンジニアは何を見ればいいですか?
+
仕様どおりに動くかに加えて、例外的な入力やエラーのときの振る舞い、セキュリティ上の問題がないか、既存の設計や命名の決まりに沿っているかを確認します。AIのコードは一見正しく見えても、前提を取り違えていることがあります。なぜその書き方なのかを自分で説明できるかどうかを基準にすると、見落としを減らせます。
Q
AI関連のスキルを持つエンジニアの提示年収はどのくらいですか?
+
Direct type独自調査では、AI・機械学習・NLPエンジニアの求人提示年収は平均917.5万円(下限666万円〜上限1,169万円)で、25職種中2位です。ただしこれはAI開発を専門とする職種の数値であり、AIを活用する側のエンジニアの年収は職種ごとに異なります。